研究概要 |
現在,経年劣化している構造物または地震入力を受けた構造物の健全度を評価するモニタリング・システム構築の試みが数多くなされている.その際構造物の維持管理または補修計画を作成する上で,構造物が保有する動的性能または損傷の程度を精度良く同定する事が必要となる.構造物のどこで,どの程度の劣化または損傷が生じているのかということを把握するために,各種非破壊検査手法の適用が試みられている.例えば,損傷部位の情報を構造物の目視等の観察から直接に得ることが出来ない場合には,環境振動,起振器入力または超音波入力等を与え,構造物の情報を含んだ応答データから,構造物の内部状態を同定することとなる.これは「先見情報」により構造物の事前モデルを作成し,入力により励振される応答データに基づいて,事後の更新モデルを得る方法であると考えられる.しかしながら,物理現象は理論的な解析が可能なガウス性確率場の近似が適用できないものが数多くあり,非ガウスおよび非線形現象に関する情報更新理論を構築する必要がある. 本研究では,線形,ガウス性という条件に拘束されない万能型の情報更新理論であるBootstrap filter/Monte Carlo filterを用いて動的システムのパラメータ同定を行った.はじめに条件付確率密度関数をもとに,解析的非線形フィルタとBF/MCFのアルゴリズムによる情報更新について基本的な考察を行い,実験データをもとにした非線形動的システムの状態推定問題に,拡張カルマンフィルタおよびBF/MCFを適用した. 解析例を通してシステムのパラメータのみならず,信頼性解析等に必要となる事後の確率密度関数を把握することが可能となり,解析手法の有効性が示された.
|