研究概要 |
本研究では,海岸域と外洋域を結ぶ重要な海域でありながら,これまでその実態解明が進んでいない水深10〜200mの大陸灘海域(Coastal Buffer Zone)に対して,それが広域土砂収支や沿岸水環境形成に果たす役割を把握するために,CBZの流れ(沿岸境界層)の空間構造を現地観測から明らかにすることを試みた.対象海域を典型的な開放性沿岸域である鹿島灘に設定し,平成11年度にはi)係留ブイに観測ステーションによる流動・水温・塩分・クロロフィルa量の長期連続計測,ii))観測船を用いた流動・栄養塩・動植物プランクトンの空間構造精密計測,iii)超音波ドップラー流速計を用いた海底境界層精密計測),平成12年度には,低次生産を中心とした物質循環構造との関連を明らかにするために,栄養塩,クロロフィルa量の年間変動計測を実施した.その結果,広域沿岸境界層を構成する多様な流動現象を捉えることに成功し,(1)沖合を流れる黒潮の沿岸波及に伴い,親潮系水が沿岸域にその前線部を先鋭化させながら侵入し,沿岸域の水環境特性を大きく変えること,(2)黒潮から波及する前線渦が沖合水と沿岸水の交換に重要な役割を果たしていること,(3)大陸棚縁辺部周辺で発生した内部潮汐波はビーム状に沿岸域に進行し,大陸棚海域でボア状に変形し,減衰しながら海岸に押し寄せること,(4)開放性沿岸域の物質循環の特徴が,i)浅海域(水深20m以浅),ii)陸棚海域(水深20m〜100m),iii)外海域(水深100m以上)という領域ごとに大きく異なっていることを示し,大陸棚海域は春季〜初夏にかけて外海影響によって栄養塩場が支配され,秋季は陸水影響によって支配されることなど観測結果に基づいて示すことができた.
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