研究概要 |
我が国の水道は高普及時代に入り,老旧化している施設も多く,適切な維持管理を行っていくことが必要である.また事業の効率化を進め,事業内容の積極的な情報開示をすすめることも求められている.そのためにはこれまで蓄積されてきた経験の上に,科学的な手法に基づく合理的な意志決定方法を取り入れて,総合的な判断を行っていくことが必要である. 本研究ではシステムの維持管理のために開発されてきた信頼性工学の手法を,水道分野に導入することをこころみ,その方法について検討しいくつかの事例に適用を行った. まず取水施設や浄水施設を,要素が直列や並列に連結されたシステムとしてとらえ,それぞれの要素の信頼度と連結形状からシステム全体の信頼性を検討した.2番目に,複雑なシステムの信頼性を考えるためのフォールトツリーを用いた検討方法を,地震時の応急給水,応急復旧に適用した.3番目として,システムの点検保全モデルの考え方を応用して,配水管の漏水防止作業計画を考えた.4番目には,信頼性を考慮した配水管網の最適設計法について検討した.5番目に,複数の配水区域を持つ水道事業体において,それぞれの配水区域の信頼性を相対的に評価するためにAHPを用いる方法を考えた.最後に水道システムの信頼性を向上させる事業の評価方法について検討を行った. 以上,本研究では,信頼性の考え方を水道の維持管理に導入するための基礎的な検討を種々行い,その可能性を示すことができた.
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