研究概要 |
環境保全のために有効利用の拡大が求められている石炭灰を多量にコンクリートに混入し,建築物に構造材料として実用化するための技術開発を目指し,その素材特性および構造部材の力学的特性を評価・検証することを目的に以下の実験研究を実施した。なお,いずれの場合も石炭灰の混入方法を実験変数とした。 1.コンクリート素材特性に関する実験研究;コンクリート試験片の素材試験から,石炭灰を混入した場合も普通コンクリートと同等の力学的性能を示し,普通コンクリートに関する既往の評価式を適用できることを確認した。また,実大コンクリート柱の圧縮載荷実験を行い,強度一変形関係および寸法効果に関して石炭灰の混入による性能劣化が無いことを検証した。 2.コンクリートと鉄筋の付着特性に関する実験研究;建材試験センター提案の標準引抜付着試験法に準じて試験を実施し,石炭灰を混入した場合は普通コンクリートと同等かそれ以上の付着特性を示すことを確認した。 3.鉄筋コンクリート部材の耐震性能に関する実験研究;準実大の梁と柱を試験体として,曲げ破壊が先行する鉄筋コンクリート部材の構造実験を実施した。耐震性能を左右する強度やエネルギー吸収能力等に関して石炭灰を混入した場合も普通コンクリートと同等の性能を示すことを検証した。 4.鉄筋コンクリート柱のせん断破壊に関する実験研究;一定軸力を加えた鉄筋コンクリート柱の逆対称水平載荷実験を実施した。試験体はいずれも同様のせん断破壊を起こし,せん断に対する耐力および変形能に関して石炭灰を混入した場合も普通コンクリートと同等の性能を示すことを検証した。 いずれの実験研究においても石炭灰を混入したコンクリートは普通コンクリートと同等もしくはそれ以上の性能を示しており,この種のコンクリートの建築構造材料としての有用性を検証し,石炭灰の建築分野への実用化へ向けた基礎的技術資料を提示した。
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