研究課題/領域番号 |
11650605
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
建築構造・材料
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研究機関 | 東京国立文化財研究所 |
研究代表者 |
石崎 武志 東京国立文化財研究所, 保存科学部・物理研究室, 室長 (80212877)
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研究分担者 |
溝口 勝 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助教授 (00181917)
登尾 浩助 岩手大学, 農学部, 講師 (60311544)
朽津 信明 国際文化財保存修復協力センター, 主任研究官 (50234456)
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研究期間 (年度) |
1999 – 2000
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研究課題ステータス |
完了 (2000年度)
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配分額 *注記 |
3,500千円 (直接経費: 3,500千円)
2000年度: 1,500千円 (直接経費: 1,500千円)
1999年度: 2,000千円 (直接経費: 2,000千円)
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キーワード | 石造文化財 / レンガ建造物 / 日本壁 / 水分特性曲線 / サイクロメータ / 凍結劣化 / 塩類風化 / 不飽和透水係数 / TDR水分測定装置 / 塩類析出 |
研究概要 |
1.石造、レンガ建造物の劣化にかかわる材料物性で特に重要な水分特性曲線、不飽和透水係数を測定する装置の作成を行った。本測定装置を用いて、タイのレンガ、漆喰の水分特性曲線、不飽和透水係数の値を求めた。漆喰は、レンガに比べて同じマトリックポテンシャルにおいて、体積含水率が大きく、いわゆる保水性が大きいことが分かった。また、これに対応して乾燥状態において、漆喰の方が、レンガより不飽和透水係数が大きいことが分かった。水分特性曲線、不飽和透水係数などの物性値を用いて、タイ、アユタヤのレンガ造建造物内の年間を通した、水分量の変化、水分移動速度などを有限要素法による解析プログラムを用いて解析した。これに関しては、保存科学38、39号で報告した。また、研究成果は、米国ソルトレークシティーで開催された米国土壌物理学会(ASA)で発表した。 2.石造文化財、レンガ建造物、日本壁など土構造物の劣化に係わる多孔質材料の物性で特に重要な、粒度分布、間隙径分布、比表面積等の測定を行った。また、水分特性曲線に関しては、加圧板法、乾燥していく過程での水分ポテンシャル、水分量を継続測定することによる乾燥法に加えて、水の凝結温度を求めることにより、土中水と平衡状態にある空気の相対湿度を測定するサイクロメータ法により、より乾燥した領域での多孔質材料の水分特性曲線を求めた。これらの研究成果は、日本文化財科学会で発表した。 3.寒冷地の石造文化財、レンガ建造物や日本壁のなどを構成する多孔質材料の劣化には、凍結・融解による凍上現象が大きく影響している。そこで、多孔質材料の凍上性を評価するための凍上試験装置を作成した。実験に於いては、様々な上載荷重、温度条件のもとで凍結実験を行った。実験結果から、凍結面への吸水速度は、凍土中の温度勾配と線形関係にあり、凍結条件によらないことが分かった。このことから、凍土中の温度勾配を把握しながら、数回に実験を行うことにより、多孔質材料の凍上性を評価できることが分かった。本研究成果は、保存科学40号で報告した。 4.日本壁の凍結劣化特性を調べる総合的な研究を行った。日本壁の代表的な構造は、表層から、漆喰の上塗り、粘性土にすさと砂分を混ぜた中塗り、粘性土とすさを混ぜた荒壁からなっている。この中塗り土と荒壁土の様々な含水比条件下での凍結温度、凍上特性、凍結融解による劣化状況を調べる試験をおこなった。日本壁の構造は、乾燥に強いだけではなく、凍結にも強い理にかなったものになっていることが分かった。また、土壁中の含水比がある臨界値より大きくなると急激に凍上現象による劣化が進むことが分かった。
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