研究概要 |
申請者らの研究グループによって開発された「シリカ粒子形状観察法」を用い,方位差角θを38.9および50.5°に固定し,回転角φを0〜90°の範囲で変化させたΣ9およびΣ11[110]非対称傾角粒界を含むCu双結晶を用いて,粒界エネルギーγの回転角依存性を実験的に決定した。その結果,Σ9粒界では,γの値は回転角が大きくなると概ね単調に減少しφ=65°において最小値に達した後再び増加する。一方,Σ11粒界では,φ=10,35,65および90°においてγ値のカスプが現れる。このことは,低Σ値の傾角粒界であっても,対称粒界よりもγ値が小さく規則性の高い非対称粒界の存在することを意味している。 一方,上記のΣ9粒界を含むCu双結晶を1173Kで48hBiドーピング処理した後,1173Kで48h均質化加熱処理し,室温および77Kにおいてインストロン型試験機による引張り試験を行った。その結果,室温ではφ=0〜32.8°において粒界破断しφ=54〜90°において粒内破断するが,77Kでは粒内破断はφ=54〜64°においてのみ観察された。破断応力は,室温では回転角が大きくなるとほぼ単調に増加するが,77Kではφ=0〜64°の範囲において回転角とともに単調に増加し最大値を示した後φ=64〜90°においてやや減少する。 本研究における以上の成果は,適切な加工熱処理法を用いることにより破断強度の高い低エネルギー粒界を優先的に分布させた微細再結晶組織を容易に実現できることを示唆している。
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