研究概要 |
本研究は金属(Pd,Ni,Cu,Mo,Fe,SUS等)に水素を強制的に電解法により注入し、物質の状態変化、水素の拡散挙動、トラップ状態をX線回折その場測定から明らかにするものである。格子定数変化の精密測定から水素による格子体積変化、水素化物の生成(Pd,Ni等)、X線プロファイル解析から水素濃度深さ分布、およびその時間分割測定からX線回折法による拡散係数測定法の開発、などを行うものである。 この目的のために、電解水素注入その場X線回折装置を製作した。試料はH_2SO_4のflow(8cm/sec)に置かれている。X線は液によって減衰するので液の厚さを0.3mmにしてある。試料を陰極として電圧をかけることにより電解注入をおこなうものである。単結晶を用いた2結晶回折法で、比較的容易に高精度測定(Δa/a=1x10^<-5>)が可能である。回折強度も非常に大きい。 まず、Pdについて以下の研究を行った。格子定数の水素注入量依存性測定から、注入量の増大と共に格子は膨張するが、やがて減少に転ずる。これは水素化物生成によるスピノーダル分解であって、固溶水素は水素化物に優先的に吸収されるためである。注入on/offによるマトリックス格子膨張・緩和、および固溶水素量の増大は拡散中のすいそとトラップされた水素を分離して見積もり得ることを示した。時効中の格子定数回復の測測定から水素の拡散係数を決定した。本測定法は拡散係数測定法として新しいものである。 次に316SS単結晶に電解水素注入をおこない、水素誘起マルテンサイト変態過程の研究をおこなった。位置敏感型X線検出器を用いて2次元、3次元X線回折強度分布を測定した。HCP-およびBCCマルテンサイト相の生成挙動、積層不整、水素固溶による格子歪を詳細に調べた。 水素の金属中での拡散挙動の研究のため時間-、深さ分割X線回折法を開発した。まず、熱拡散についてLiF単結晶を用いた実験をおこない、この方法の有効性を確認した。
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