研究概要 |
SrBi_2Ta_2O_9(SBT)薄膜は疲労の少ない強誘電体不揮発性メモリーへの応用が期待されている。現在、SBT薄膜の作製には様々な手法があるが、その中でも金属アルコキシドを用いたゾル・ゲル法は低温で均一な薄膜が作製できる。ゾル・ゲル法において、前駆体溶液の分子および反応制御が重要となる。また、薄膜の低温結晶化のために、水蒸気の導入、紫外線照射の導入、溶液の配向制御などが検討されている。そこで、本研究ではゾル・ゲル法により作製したSBTゲル膜にエキシマUVを照射し、結晶性および配向性に及ぼす照射効果およびその最適条件の検討を行った。 Sr,Bi,Taのアルコキシドを2-メトキシエタノールに溶解し、前駆体溶液を調製した。この溶液をPt/Ti/SiO_2/Si基板上にスピンコートし、得られたゲル膜に種々の温度でN_2雰囲気中、5分間エキシマ照射した。これを500℃で仮焼した後、750℃で焼成を行い薄膜を作製した。得られた薄膜の結晶性をXRD,微構造をSEM,強誘電特性をRT-66A,ゲル膜中の残留有機物をFT-IRによりそれぞれ調べた。 XRDのの結果から、エキシマ照射したゲル膜を750℃で焼成することにより、結晶性の向上を確認できた。特に、加熱温度200℃におけるエキシマ照射は、結晶化に最も良い効果を示した。エキシマ照射はRTA膜の配向性には大きな影響は及ぼさず、薄膜は(115)ピークを最強面としたランダム配向となった。また、微構造観察において薄膜の平均粒径はエキシマ照射により0.1〜0.2μmと粒成長した。ゲル膜のFT-IRスペクトルにおいて、エキシマ照射したゲル膜は、未照射膜に比べて約2900cm^<-1>付近に強いC-H基に基づく吸収を示すことから、N_2雰囲気中で分解した有機基の残留が考えられる。また、エキシマ照射した薄膜の強誘電特性は、残留分極値Pr=4.1μC/cm^2、抗電界Ec=88.7kV/cmであった。以上のことから、エキシマUV照射は残留有機物の除去に有効であり、結晶性の向上に寄与するものと考えられた。
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