研究概要 |
イオン交換能や吸着能を有するセラミックス微粉末を,多数の貫通孔を有する形態に成形することで,環境中に投入するだけで迅速に有害物質を吸着・回収することができる「環境浄化モジュール」を作製することを目標として,ゼオライト微粉末の金属基材上への電気泳動成形ならびに固定化,及び実際のモジュールを用いた有害イオン吸着特性について検討した。3A型合成ゼオライトを平均粒径0.6μmに微粉砕し,エタノールを分散媒としてステンレス鋼線(SUS304,1.0mmφ)上に電気泳動法により堆積させた。また,ゼオライト粉末層の接合強度向上のために,並質ケイ酸塩ガラス微粉末(平均粒径1.0μm)をステンレス鋼線上に先に堆積させ,ガラス層/ゼオライト層の二重構造を構築した。これらをAr雰囲気中で700℃1h焼成したところ,ゼオライト堆積層表面に焼成収縮に伴う亀裂が生じたが,ゼオライトの接合強度は,ガラス有り・焼成>ガラス無し・焼成>未焼成の順になり,亀裂は入るものの焼成ならびにガラス粉末接合材の利用がゼオライト粉末の固定に有効であることが示された。吸着実験に用いるモジュールの基材としては,ステンレス鋼線の代わりに4mmφのSUS304製ネジ棒(長さ10cm)を使用した。ゼオライト3A並びに4A微粉末を電気泳動成形法により堆積・加熱固定化させたネジ棒を6本束ねてモジュールを作製した。0.31ppm,2.37ppmの2種類の濃度の塩化アンモニウム溶液を用いて,アンモニウムイオン吸着実験を(1)作製したモジュール,(2)ゼオライト焼成粉末,(3)ゼオライト成形・焼成ペレットについて行った結果,濃度によらずアンモニウムイオン吸着の速度は,粉末>モジュール>ペレットの順となり,ゼオライトをモジュール化することの意義が十分に認められた。今後の課題として,堆積量が多い場合のゼオライト固定化手法の改善が期待される。
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