研究概要 |
コーティング組織の均一性向上と溶射効率向上を図るために、溶射粉末として直径32μm〜53μmのFe-18mass%Cr-2mass%B合金の溶融アトマイズ粉を使用した。溶射チャンバ-内圧力や溶射距離などの条件を最適化した後に、この粉末を種々の温度のSS400鋼基材上に減圧プラズマ溶射した。これらのコーティング、および熱処理を施したコーティングの組織と特性を調べ、以下の結果を得た。 1.コーティングの組織: 溶射中に低温度に保ちながら作製したコーティングの主構成相は非晶質相とフェライトであり、熱処理によって非晶質相は分解して非平衡Fe_3Bが析出し、更に高温度では(Cr,Fe)_2Bが現れる。溶射中に1133K、あるいは1293Kの温度に保って作製したコーティング、および後者を1473Kで熱処理したコーティングは、フェライトと(Cr,Fe)_2Bから成る。1133K、および1293Kで得たコーティング中の(Cr,Fe)_2B粒子径は約200nm以下であり、ナノ粒子を強化相とするコーテイングを作ることができた。溶射中の温度を高めることによって、また後熱処理を施すことによって、コーティングを構成する扁平粒子間結合力が高まると共にポロシティが減少する。 2.コーティングの特性: 低温度で作製したコーティングのマイクロビッカース硬さは600以上であり、コーテイング自体の引張り強さは約670MPaである。これに対して、(Cr,Fe)_2Bのナノ粒子を分散したコーテイングでは、硬さは400〜450になるが、引張り強さは約1.4Gpaと極めて高くなる。1473Kで熱処理したコーティングの硬さは約300であるが、引張り強さは約1Gpaと高く、さらに耐磨耗性は本研究でのコーティング中で最も優れている。
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