研究概要 |
Se-As系廃棄物からのセレンと砒素の分離・回収方法として,酸化燃焼法にひと味加えたソーダ酸化揮発分離法の開発を目的として研究を行い,以下の知見を得た。 1.真空熱分解法ならびに酸化燃焼法の適用性 真空熱分解法ならびに酸化燃焼法を熱力学的に検討した。前者は適用困難であることが分かったが,後者については条件設定により適用性が考えられたため,実験により確認した。その結果,単純な酸化燃焼法のみではセレンと砒素の分離・回収は困難であることが分かった。 2.ソーダ酸化揮発分離法の検討 ソーダ系フラックスを用いて,添加フラックス量,吹き込みガス種(酸素分圧),フラックス種の影響について,それぞれ検討した。その結果,いずれの条件においても良好な結果は得られなかった。したがって,本法はセレンと砒素の完全分離・回収には不向きであり,その適用性は低い。 3.セレン-鉛合金法による分離・回収 本法はセレンを鉛と合金化させSe-Pb合金として固定し,砒素を揮発させ,両者を分離する方法である。適当量の鉛を添加して溶融することにより,セレンはほぼ全量,鉛と合金をつくり固定され,揮発・凝縮した砒素の純度は98%以上となることが分かった。添加鉛量を過剰にすると,セレンの蒸発率は減少し,鉛中の固定量が増加するものの,砒素の蒸発率も大幅に減少するため,分離性・純度の両面から悪影響を与えることが分かった。また,処理後に排出されるSe-Pb合金については,酸化燃焼法を適用することにより,セレンと鉛の分離・回収が可能であることが分かった。したがって,Se-As系廃棄物の完全分離・回収にはセレン-鉛合金法が適用可能である。
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