研究概要 |
21世紀の新技術を支えるべき新素材,とくに金属系の材料の開発段階においては,初期凝固過程における組織形態を繊細に制御することが絶対的に必要となる.また,凝固プロセスはすでに旧世紀において研究し尽くされており,未来の凝固プロセスは従来にない操作因子を付加するものであるはずである.本研究は強磁場により初期凝固過程を制御する方法の第1段階として,強磁場作用下での熱伝達を明確にすることを目的としている.2重円筒管チャンネル内の低融点合金の温度を測定し,冷却された内管への凝固界面を介した熱伝達速度を求めた.実験は強磁場作用下で行い,同時に微弱電流を内管から外管へ印加することで強制対流を生じさせ,その熱伝達速度への影響を明確に知ることができる.得られた知見は以下の通りである. 1.5Tまでの強磁場の印加により,冷却面を下降する自然対流が抑制される.これは,磁場中を移動する電気伝導性物質内に生じる誘導電流と磁場の相互作用によって流動と逆向きのローレンツカが発生するためである.この理論からは,完全に流動を抑制することは不可能であるが,実際の流体には粘性があり,その効果により,ほとんど抑制できると考える. 2.ローレンツカによりチャンネル内を円周方向の流動を生じさせることができる.デンドライト先端では乱れた流れが生じ,熱伝達が促進すると考えることができる.結果としては,熱伝達係数はローレンツカに比例して増加し,実験的にも確認できた. 3.磁場は乱れを抑制する効果があり,強磁場の作用下ではローレンツカが同じでも,より磁場が高い場合には熱伝達は促進されないと考えることができる.実験においても,より低磁場・高電流の場合に熱伝達係数の増加が顕著であったことが示された.
|