研究概要 |
1.実験試料には、タンパク溶質分子の荷電特性を表わすゼータ電位がOのpH、すなわち等電点が異なり、分子の大きさがほぼ同じと考えられる牛血清アルブミン(分子量:67,000、等電点pH4.8)およびヘモグロビン(分子量:68,000、等電点pH6.8)を使用し、また、限外濾過膜には、分画分子量が50,000のポリサルフォン系高分子膜を用いた。各タンパク質分子の試料溶液のpHに対するゼータ電位の変化と限外濾過膜のゼータ電位のpH依存性を測定し、濾過特性を考察するための基礎データとした。 2.デッド・エンド型加圧濾過試験器を使用し、pHを種々に調整したタンパク質試料溶液を濾過器に供給して一定圧力下で回分式限外濾過実験を行い、濾過流速や膜透過流束および溶質の見かけの阻止率の測定から限外濾過特性を調べたところ、各タンパク質試料溶液においてその濾過特性は分子のゼータ電位にほぼ関係し、等電点で最も濾過速度が小さくなり、ゼータ電位の極性には依らずにその絶対値が大きくなるほど濾過速度は増大することを確認した。そして、分子量がほぼ同じ試料の等電点における濾過速度はほとんど同じになった。また、分離膜のゼータ電位の変化は濾過過程全体にはほとんど影響を与えないことを明らかにした。 3.回分式電気限外濾過装置を製作し、pH既知のタンパク質溶液を一定圧力の下で定電圧操作による電場を印加して電気限外濾過実験を行った。その結果、直流電場では印加電圧が増加するとともに溶質分子のゼータ電位に起因する電気泳動現象によって濾過流速は著しく増大した。また、等電点においては電場を加えても濾過流速はほとんど変化しないことを確認した。しかし、実験条件の範囲では、電極の極性反転による交流電場では、周期的に直流電場とほぼ同じ濾過流速に回復されることが明らかになったが、時間経過とともに次第に減少する傾向が示され、断続的電場では特に有効性を示す結果は得られなかった。
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