研究概要 |
NF_3を用いた反応性イオンエッチング(RIE)によりSiC表面をエッチングすると、NF_3圧力が3Paの場合にエッチング速度が最小となり、それより圧力を減少させても、また、増加させてもエッチング速度は増加した。そこで、NF_3圧力1Pa,RFpower100Wの条件下でSiCをRIEした試料をAFMで観測すると、エッチング時間30分まではナノオーダーの平滑な表面が維持でき、60〜90分間RIEを継続しても、20mnの凹凸が観測される程度であった。一方、NF_3圧力が3Pa以上では、SiC表面はCarbonrichとなり、その部分がマスクとなって表面上にSpikeが形成された。発光分光分析から、NF_3プラズマ中にはN_22^+,N_2,Fラジカルなどの化学種の存在が確認され、低いNF_3圧力下では、N_2^+などのプラズマ種による物理的エッチングにより、また、高いNF_3圧力下では、主にFラジカルによる化学的なエッチングにより、高いエッチング速度が得られることがわかった。これらの結果から、NF_3圧力0.5Paでのエッチング速度は87nm/minで、2μmの深さまではNF_3ガスのみで異方性エッチングが可能であり、しかも、ナノオーダーの平滑な表面が維持できると考えられる。また、(111)面方向にエピタキシャル成長させたSiC(111)と多結晶β-SiCをRIEした後の比較から、必ずしも粒界がエッチングされやすいとは限らないこと、Ar^+による物理的なエッチングは、いずれの結晶面も均等であるのに対し、ダウンフローエッチング(DFE)では、SiCの(111),(200)および(222)面よりも(220)および(311)面の方が化学的なエッチングは起こりにくいことがわかった。さらに、熱天秤法によるNF_3とSiCの化学反応の研究から、Fラジカルは優先的にSiと反応し、生成した炭素原子(C)同士は再結合してグラファイトが生成することも明らかとなった。
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