研究概要 |
本研究は、高硬度でバンドギャップの大きいダイヤモンドに類似した特徴を持つ『窒化炭素』(組成C_3N_4)を化学的手法で合成するため、既設の赤外顕微鏡を付属したFTIR装置を用いて微小領域において混在する生成物を本研究課題で設置した小型ヒータによりIn Situで反応のプロセスを観察し、その反応機構を解明することを目的とした。さらに、その情報を基に、純物質を得るための最適条件を決定し、より優れた機能を有する『窒化炭素』の合成を目指した。 4年間で様々な反応系で窒化炭素の合成を試みたが、特筆すべき反応系としては四塩化炭素-アンモニア系が挙げられる。この系で反応温度1,000℃の気相反応によって窒化炭素の合成を行った。生成物の中で、煮沸水で処理することにより得られた高硬度な材料についてESCA測定をした結果、Clsスペクトルに明確な2本のピークを観察した。400℃で熱処理することによって硬度が低下し、上記の2本のピークのうち高エネルギー側のピークの相対強度が低下したことから、高エネルギー側のピークがsp3構造由来のピークであり、高硬度と関係していることを見出した。この材料は、モース硬さが7である水晶に傷をつけることを原子間力顕微鏡観察によるスクラッチテストで確認した。以上の反応生成物および熱処理生成物について、元素分析、X線回折、FTIR、およびESCAにより結晶構造や化学結合状態の変化を観察し、この系については反応機構がほぼ解明できるまでになった。 これまで4年間の研究補助を受け、四塩化炭素-アンモニアの反応系で反応機構を解明することにより、モース硬さが7以上で、紫外線励起で発光する炭素/窒素材料を合成することが可能となった。
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