研究概要 |
近年、高感度な光学純度決定試薬の開発に大きな関心がもたれるようになった。そこで本研究では,当研究室で開発した蛍光性キノキサリンにアミノ酸残基を含む光学活性蛍光物質を合成し,キラルなカルボン酸類の高感度な光学純度決定試薬としての可能性を評価することを目的とした。 以下に,この2年間の研究成果の概要を示す。1.4-ニトロ-1,2-フェニレンジアミンから4段階の反応を経て合成した6-アミノ-2,3-ジモルホリノキノキサリンに,アミノ酸をカップリングし蛍光性光学活性キノキサリン類を得た。2.蛍光性キノキサリンとラセミ体のカルボン酸類(2-フェニルプロピオン酸,ナプロキセン・イブプロフェン)を向山法によりカップリングし,2時間以内に高収率で蛍光性ジアステレオマーを得ることができた。3.蛍光性ジアステレオマーはMeCN中370nmの光を用いて励起したところ約440nmに発光極大を示し,ストークスシフトは70nmであった。4.MeCNにH_2Oを添加した場合,H_2Oの割合の増加に伴って蛍光強度が減少することがわかった。5.アントラセンを標準物質として用いジアステレオマーの蛍光量子収率を算出したところ,0.052であった。6.逆相系ODSカラムを用いたHPLCに於ける分離度を汎用のMeCN:H_2O混合溶媒を移動相に用いて測定した結果,いずれも16分以内で完全に分離・検出することができた。7.検出限界は,S/N比5のとき5pmol/10μl injection volumeであった。 以上のように,アミノ酸残基を有する蛍光性キノキサリン類は,キラルなカルボン酸の新しい光学純度決定試薬になり得ることがわかった。
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