研究概要 |
α-アミノ酸に対応するα-ケト酸をペプチドのN末端に結合させて、α-ケト基の還元的アミノ化を立体選択的に行うことができれば、光学活性α-アミノ酸の代わりにプロキラールなα-ケト酸をユニットとして用いる新しいペプチド合成法となる。このような新しいペプチド合成法の開発を目指して、ペプチドのN末端に結合させたα-ケト酸の還元的アミノ化を立体選択的に行う方法を開発することが本研究の目的である。検討の結果、α-ケト酸をオキシムに変換してからペプチドのN末端に結合させてα-オキシムアミドとし、これを還元する方法が有効であり、還元の方法としては、亜鉛による還元が最もよい結果を与えることがわかった。そこで、ピルビン酸やフェニルピルビン酸等のα-ケト酸をオキシム化してα-オキシム酸とし、これをL-フェニルアラニン、またはL-ロイシン1〜4(n)個からなるペプチドメチルエステルのN末端に結合させたα-オキシムアミドを基質として亜鉛による還元的アミノ化の立体選択性について検討した。その結果、亜鉛還元の反応条件として、添加する酸としてはメタンスルホン酸、溶媒としてはテトラヒドロフランを用いた場合に最も良い結果が得られた。また、ペプチド鎖の置換基が立体選択性に与える影響を調べたところ、α-オキシム酸部分の置換基の違いは立体選択性にほとんど影響を与えないが、ペプチド鎖の長さに大きく影響を受けることがわかった。すなわち、nが1の時、R体が優先的に生成したが、nが2ではS体が優先し、nがさらに増加するとS体の割合が増加することがわかった。さらに、ペプチド鎖の種類はL-フェニルアラニンとL-ロイシンでは同様の傾向を示したが、ペプチド鎖の部分をL-プロリンとした基質についても検討したところ,この場合にはnが1の時でもS体が優先的に得られることがわかった。
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