研究概要 |
本研究では,数ナノメーターのサイズを有し,それ自身が既にバンド構造による半導体的な特性を有している有機置換基で可溶化されたSiおよびGe系ナノクラスターを基本単位とした新規材料の分子設計・合成および光・電子物性の検討を行った。これら可溶性有機SiおよびGe系ナノクラスターのサイズの制御やSi/Ge系ヘテロナノクラスター構造形成によって,より次元の拡張された3次元超格子構造の形成・光電子物性制御の新手法を開拓することを目的とした。有機シリコンおよびゲルマニウム系ナノクラスターの合成においては,Mg金属を用いたテトラクロロシランおよびテトラクロロゲルマンの反応により,対応するシリコンおよびゲルマニウムナノクラスター構造を形成した。さらに,これらの表面を有機置換基で修飾することによって,有機溶媒に可溶性の有機SiおよびGe系ナノクラスターを得ることができた。それらの共重合反応によるSi/Ge系ヘテロナノクラスターの形成を,ラマンスペクトルのSi-Si,Si-Ge,およびGe-Ge結合に関わるバンドの観測から確認した。これら有機SiおよびGe系ナノクラスターの時間分解発光スペクトルを用いた解析においては,発光波長のエネルギーや発光寿命において,顕著な量子サイズ効果が確認された。有機SiおよびGe系ナノクラスターは,可視部にストークスシフトの大きなブロードな発光を示す。その発光の起源に関しての議論を,時間分解スペクトルによる測定や分子軌道法を用いた計算から行い,分岐鎖まわりに形成される歪んだ励起状態からの発光であることが明らかになった。また,発光の減衰曲線の解析から,シリコン・ゲルマニウムヘテロクラスター内でのエネルギー移動過程が示された。有機シリコンおよびゲルマニウム系ナノクラスターは,有機溶媒に可溶であるため,スピンコート法等によって,容易に薄膜形成が可能である。また,加熱処理,プラズマ照射,レーザーアニーリング等によって有機置換基を脱離させて無機化することが可能である。このような特性を生かして,有機シリコン・ゲルマニウム系ナノクラスターを前駆体することによりSi結晶相,Ge結晶相,Si/Ge混晶からなる半導体薄膜を形成することができた。
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