研究概要 |
本研究では,将来型宇宙輸送機である完全再使用型宇宙往還機の推進システムと期待されるスクラムジェットエンジン(超音速燃焼ラムジェットエンジン)の極超音速飛行状態における性能予測と現象の把握を目的として,高エンタルピ衝撃風洞を用いた水素の超音速混合と燃焼について解明した. まず,スクラムジェットエンジンが作動する極超音速状態を,室蘭工業大学機械システム工学科航空基礎工学講座所有の小型高エンタルピ衝撃風洞(ノズル出口直径60mm)を改良して実現した.実現できた飛行状態はマッハ数7,高度30kmであり,約2MJ/kgのエンタルピーを持つ流れを約400μs維持できる.この飛行条件は,スクラムジェットエンジンの作動条件十分満たしている. 次に,機体圧縮型のスクラムジェットエンジンモデルを製作した.流れの可視化から,機体圧縮は設計どおり行われ,マッハ約7の流れが,燃焼器内ではマッハ約1.7に減速され,静温約1,400K,圧力0.8気圧まで圧縮できることを確認した.この条件は水素の自発着火に条件を満たしている. 上述の流れ条件の対して,燃焼器内に水素を噴射し,超音速混合と超音速燃焼試験を行った.超音速混合実験では主流に窒素を用いることで,非燃焼場を実現した.流れの可視化によれば,水素は十分速やかに混合していることが確認できた.一方,主流に空気を用いた燃焼試験では,燃焼器内に発光が観察された.さらに,燃焼器内の圧力測定と高速度ビデオによる紫外波長領域の観察を行った.その結果, 1.風洞の作動時間内に紫外波長領域の発光があった. 2.そのとき,燃焼器内の壁面静圧は上昇した. 3.燃焼器内の壁面静圧の上昇は当量比が大きいほど高い. が判明した.このことは,本研究で用いたスクラムジェットエンジンモデルで超音速燃焼が実現していることを示している.航空宇宙技術研究所角田宇宙推進研究センターのHIESTを用いてサブスケールスクラムジェットエンジンモデルの燃焼試験が行われようとしているが,本研究グループが日本で最初に高エンタルピ衝撃風洞を用いたスクラムジェットエンジンモデルの燃焼試験に成功した. 今後,本研究を発展させ,より効率的な超音速混合と燃焼を行うための燃焼器の改良やインテークと燃焼器の整合性がエンジン性能にいかに影響を及ぼすか,等について解明する.
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