研究概要 |
本研究は,近年,中国や韓国,国際稲研究所(IRRI)で育成された多収性穂重型あるいは超穂重型品種(主にインド型品種,以下,(超)穂重型品種)について,多収穫実現の前提となる穎花の分化・退化特性と登熟特性について検討した.得られた結果は以下のように要約された. 1.近年育成された(超)穂重型品種の1穂当たりの分化,退化穎花数および穎花退化率(退化/分化穎花数×100)には,かなりの品種間差異が認められた.しかし,いずれの品種でも退化穎花の主体は2次枝梗穎花であり,特に1次枝梗上の退化2次枝梗に由来する退化穎花の割合が高かった.これらの品種の穎花退化率は,旧品種に比べて低いということはなかった.2.分げつ期の窒素施用量の増加により穂数が増加し,1穂当たりの分化穎花数もある程度増加したが,穂数の増加とともに穎花退化率が顕著に増加し,現存穎花数は減少した.3.出穂期40〜20日前のNPK三要素の追肥により,1穂当たりの分化穎花数が増加し,退化穎花数が減少して,現存穎花数(籾数)が増加した.この効果は,特に超穂重型品種で大きく認められた.また,出期15日前〜出穂期の遮光や高い昼夜温下では,無遮光や相対的に低い昼夜温下に比べて,分化穎花数への影響は小さかったが,穎花退化率が増加し,現存穎花数は少なくなった.出穂期の1茎当たり地上部乾物重(SDW)あるいは分化穎花数に対するSDWの増加により穎花退化率は低下したが,その程度には品種間差異が認められた.また,乾物重あるいは吸収窒素当たりの穎花生産効率には,(超)穂重型品種間で差が認められた.4.(超)穂重型水稲品種の出穂期貯蔵炭水化物と出穂期後の同化炭水化物の登熟への貢献程度は,品種や栽培条件によって異なると推定された.また,収量の増加とともにNPK三要素の吸収量も増加したが,Nに対するPとKの吸収量比率は低下した.
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