研究概要 |
イチゴ果実における糖の蓄積機構を明らかにするため、果実内の糖含量とインベルターゼ活性との関係を調査し、その後インベルターゼ遺伝子の単離・解析を行った。さらに,イチゴ葉片培養におけるシュート形成条件を明らかにした. 1.'麗紅'では、果実の成熟に伴うGlcおよびFruの増加はほとんどみられなかったが、Sucは直線的に増加した。'とよのか'では、SucよりもGlcとFruの量が成熟初期から大きく、その後も果実の成熟に従い、GlcとFruは増加した。次に、'麗紅'および'とよのか'のインベルターゼ活性を比較したところ、細胞壁結合型インベルターゼは完全着色期を除いては両品種でほとんど差異がなかった。一方、液胞遊離型インベルターゼは'麗紅'で各成熟段階を通してほとんど変化がなかったが、'とよのか'では果実の成熟に伴い増加する傾向にあり、全段階を通して'麗紅'よりも大きかったことから、液胞遊離型インベルターゼの活性は、還元糖の増加と密接な関係があることがわかった。 2.インベルターゼ遺伝子のクローニングを行ったところ、2種類の遺伝子断片(invIおよびinvII)が単離され、相同性検索の結果から、invIは液胞遊離型インベルターゼmRNAの一部(520bp)、invIIは細胞壁結合型インベルターゼmRNAの一部(471bp)であった。さらに、invIをもぐに作成した抗体を用いたウェスタンブロッティングの結果から、タンパクの発現においても、'とよのか'の液胞遊離型インベルターゼは'麗紅'よりも多く発現し、特に果実成熟初期に多く発現していることから,イチゴにおける糖の蓄積型を決定する要因として、液胞遊離型インベルターゼの働きが大きく関与していると考えられた。 3.'女峰'と'麗紅'は2.4DとCPPUあるいはTDZを添加した1/2MS培地に葉片を置床し,25℃の暗黒条件でシュート形成率が60%以上となった.しかし,'とよのか'はこの条件でもシュートが5%しか形成しなかった.
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