研究概要 |
低温貯蔵は青果物のシェルフライフを延ばす最も効果的貯蔵方法である.しかし,貯蔵限界以下の低温では青果物に低温障害が発生して問題となる.最近,低温が植物組織に酸化ストレスを引き起こし,活性酸素種のレベルを増加させることが報告されている. 本研究ではピーマン果実,ウメ果実,サツマイモ,ジャガイモの抗酸化機構における低温貯蔵中の変化を調べた.貯蔵中低温障害と見られるピッティングの発生が貯蔵中ピーマン果実では1℃貯蔵のみ認められ,その発生率は経時的に増加した.ウメ果実では7℃貯蔵に,サツマイモでは1℃貯蔵に認められ,その発生率は経時的に増加した.貯蔵中の過酸化水素含量の変化は,ピーマン果実では1℃貯蔵で増加した.ウメ果実では7℃貯蔵で増加した.サツマイモでは1℃貯蔵で増加した.ジャガイモではいずれの貯蔵温度とも貯蔵当初のレベルを維持した.ピーマン果実のアスコルビン酸はいずれの温度区も貯蔵中増加した.一方,酸化型アスコルビン酸は1℃貯蔵で一時的増加を示し,それ以外の温度区では貯蔵中緩やかに減少した.ピーマン果実の還元型グルタチオンと酸化型グルタチオンは貯蔵中いずれの温度区とも緩やかに減少した.特に,1℃貯蔵では還元型グルタチオンの減少程度が大きかった.スーパーオキシドジスムターゼの活性はピーマン果実では1℃貯蔵では貯蔵7日に著しく増加した.ウメ果実では7℃貯蔵で貯蔵1日に一時急増した.サツマイモでは1℃貯蔵で増加した.ジャガイモではいずれの貯蔵温度とも貯蔵当初のレペルを維持した. これら結果は青果物の低温障害の発達が低温貯蔵中の抗酸化機構の変化と関係があることを示した.
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