研究概要 |
トマトの台木として,土壌伝染性の病害に強度の抵抗性を有するナス属植物Solanum toxicariumを用いるために,接ぎ木トマトの収量,果実品質および養分吸収に与える土壌温度と施肥量の影響について調査した.また,本種の青枯病(Ralstonia solanacearum)抵抗性に関する機構解明を行った. Solanum toxicariumを台木としたトマト栽培では自根トマトに比べて地温と施肥量を高く管理することで,自根トマトと同程度の果実収量および果実品質を得られる可能性が示唆された. Solanum toxicariumを台木とした接ぎ木トマトに青枯病細菌(Ralstonia solanacearum(R. s.)8224)を断根接種すると,台木のS. toxicariumから細菌が分離されたが,穂木からは分離されなかった.また,分離された細菌には病原性は認められなかった.接ぎ木をしていないS. toxicariumの場合においても上記と同様の結果が得られた.トマトを台木とした接ぎ木S. toxicariumに青枯病細菌(R. s.8224)を葉柄から接種すると,穂木のS. toxicariumから細菌が分離された.また,それらの細菌には病原性が認められた.In vitroにおいて,青枯病細菌(R. s. 8109,8224および8238)をS. toxicariumに断根接種すると,S. toxicariumの茎内からは病原性を持つ細菌と持たない細菌が得られた.また,それらの割合は青枯病細菌の種類によって異なっていた.従って,S. toxicariumの根は,青枯病細菌の病原性を変化させる可能性があることが示唆された.
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