研究概要 |
平成11年,12年の研究の結果,以下のような成果を得た. 1)高知県下の農耕地土壌を用いて微量要素であるホウ素の分析を行った. 可給態ホウ素の抽出法についての検討を行うと同時に,土壌中での形態について分別定量を行った.高知県下の農耕地土壌は,可吸態のホウ素含量が少なく欠乏気味の濃度範囲にあった. 2)メチルブロマイドの使用禁止に伴う代替土壌消毒法として,蒸気消毒法の検討を行った. メチルブロマイド消毒と蒸気消毒は土壌中の微生物の多様性を比較的損なわない消毒法であったが,クロロピクリンを用いた場合には非常に強い殺菌効果があった.蒸気消毒法はある程度メチルブロマイドの代替法として機能するが,マンガンの溶出を抑えるための対策が必要であることがわかった. 3)菌根菌資材を用いて植物根圏でリン酸などの養分吸収が促進されることを確認した.その際に,根圏でリン酸フォスファターゼ活性が高まっており,土壌中のリン酸を分別定量結果から,鉄結合態のリン酸が可溶化されることによって,鉄,リン酸の有効態画分が増加することが明らかとなった. 4)造成された日本シバ草地において,周縁の森林土壌との比較を目的に,土壌の物理・化学的性質と微生物の動態をモニタリングした.造成シバ草地では,造成後経年数が増加するにつれて,に従って,低栄養要求性の細菌類が増加することがわかった.その原因は,シバの根圏より10cm下に,牛の踏み固めによる硬盤層が生成し,さらにその直上に粒状構造が発達することで根圏の物理環境(保水性・排水性)が改善されることにより,微生物にとって良好な生活環境ができることから,低栄養でも生育可能な微生物の働きが一層重要になることがわかった. 5)中間種鉱物粘土の合成を行い,重金属の吸・脱着反応を検討した.重金属の選択性は,吸着サイトの性質の違いによって大きく左右されることが明らかとなった.
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