研究概要 |
まず,非汚染土壌,に直流電圧を印可し,土壌内電位分布と間隙水の水質変化を時間の関数として測定した.この結果,陽極の酸性化にともなって土壌鉱物が溶解し,Alイオンが主要イオンとして出現し,酸性領域と中性領域の境界で沈殿・溶解を繰り返しながら,酸性領域の広がりに伴って非常にゆっくりと泳動する現象を見いだした.この酸性領域では電位勾配が非常に小さく,イオンはもっぱら電気浸透フラックスによって輸送されていた.この実験の結果に基づき,重金属イオンの除去を効率的に行うには,土壌内にpHの急変領域を作らないように電極および土壌のコンディショニングを行うことが必要であることが明らかになった. ついでpHの急変領域の出現やその領域での電気化学的環境をシミュレートするための計算コードを,基礎式の数値解法として粒子移動法を利用して作成した.この計算コードは塩化ナトリウム溶液中のNa, Cl, H, OHイオンの分布を精度よく再現することを確認した. さらに,電気化学的修復法の適用可能性評価のため,粘土鉱物組成の異なる土壌からのPb, Cu, Zn除去実験およびCdの抽出実験を行い.非晶質アルミニウムケイ酸塩含量の高い土壌には適用しがたいこと,またスメクタイト質土壌においては,陽イオン交換反応が除去速度の制限要因になりうることを明らかにした. 最後に,EDTAとSDSを陰極側から陽極側へ泳動させることによりPb-重油複合汚染土壌の修復をこころみた.この場合,前の実験の結果に基づき,土壌内でのpH急変をさける工夫をした.1000mg kg^<-1>で添加したPbは10-40mg kg^<-1>まで減少した.しかし,50g kg^<-1>で添加した重油は25-30g kg^<-1>までしか低下しなかった.
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