研究概要 |
多量体構造のサブユニット間相互作用が好熱菌タンパク質の熱環境への適応戦略となるか否かの分子的基盤情報を得るため、30-66℃の温度領域で生育する通性好熱菌Bacillus thermoamyloliquefaciens KP1071の80℃で10分の半減期を示す分子量540,000のサブユニット非解離性ホモ6量体α-グルコシダーゼIIと72℃の150mMリン酸緩衝液(pH6.8)内で10分の半減期を示す分子量530,000のサブユニット解離会合性ホモ6量体α-グルコシダーゼIIIの各々のサブユニットをコードする対応遺伝子をクローニングし、遺伝子構造を解析した。その結果、1)対応遺伝子は各々4.8-kbp SalI-HindIII DNA断片と3.8-kbp HindIII DNA断片してクローニングされた;2)これらのDNA断片は各々2361bpと2310bpのオープンリーディング・フレームを含み、787残基よりなる分子量91,070のタンパク質と770残基よりなる分子量88,620のタンパク質に対応した;3)大腸菌で発現され均一に純化された酵素IIとIIIは、酵素IIがN末端7残基を欠落していないことを除けば、分子特性(ホモ6量体構造、分子量、耐熱性など)や触媒特性では対応天然型酵素と一致した;4)酵素IIのサブユニットの一次配列は、グリコシルヒドロラーゼ・ファミリー31に属する古細菌Sulfolobus solfataricus 98/2α-グルコシダーゼの一次配列と34%、酵素IIIのサブユニットの一次配列と32%、14の真核生物由来のα-グルコシダーゼの一次配列と24-30%一致した;5)他のα-グルコシダーゼと同様に、酵素IIとIIIのサブユニットは三つの二次構造領域、即ち、β構造のN末端領域、二つの触媒残基(酵素IIではAsp407とAsp484;酵素IIIではAsp383とAsp451)を含むα/βまたはα+β構造の中央領域、β構造のC末端領域から構成されるβ(α/β)βまたはβ(α+β)βのサンドウイッチ二次構造トポロジー・モチーフをとることが判明した。
|