研究概要 |
スクアレン環化メカニズムの解明を目的にして、スクアレン閉環酵素の部位特異的変異株を作成し、その酵素反応を追跡した。また、基質アナログを合成しその環化生成物を同定することによって基質認識機構を探ることも本研究の目的とした。以下の実験結果を得て、6報の学術論文としてまとめた。 1)開始段階であるスクアレン末端二重結合のプロトン化は、D374とD376によって達成される。また、D313,D447,H451はプロトン供与体の酸性度を増加させる機能,W312は開始段階において基質結合部位として働いている。 2)377は、B環形成段階においてC10カルボカチオン中間体の安定化に機能している。 3)F365は、5員環のC環形成段階においてカチオン-π電子相互作用によってC8カルボカチオン中間体の安定化に機能している。この研究は、カチオン-π電子相互作用の存在を強く示唆する初めての実験的事実である。 4)W169とW489は、6員環のD環形成(環拡張反応)段階において基質結合部位として機能している。W489はC17カルボカチオンの安定化にも寄与している。 5)DXDDTAモチーフのAsp残基(D374,D376,D377)は、活性部位であり、開始段階からB環形成までの触媒反応に機能している。また、T378は活性部位ではない。 6)変異酵素W169F,W169H,W489Fの生産するトリテルペンのD環が5員環の構造を有している事実から、ホペンの6員環のD環形成はまず5員環中間体が形成され、その後6員環へと環拡張するという新しい反応機構を提案できた。 7)Y420の変異実験から、6/6/5-fused tricyclicのmalabaricane骨格及びF605の変異実験から、新規骨格物質を生産することを見い出した。これをprohopene A,Bと命名した。また、F605の機能をC-17cationの安定化に関与すると結論付けた。 また、基質アナログの研究をとうして 8)環化開始には末端にジメチル基が必須である。 9)C-10位のメチル基が活性型コンフォメイション規定するはじめてのデータを得た。
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