研究概要 |
本研究ではジャガイモで見出されたβ-1,3-グルコオリゴサッカライドによるフェノール性アミド化合物の誘導メカニズムの解明を試みた。 1)ジャガイモにフェノール性アミド化合物誘導活性を示す市販のラミナリンは藻類由来のβ-1,3-グルコオリゴ糖であるが、その構造にはまだ不明な点がある。エリシター活性を示すオリゴ糖成分を明らかにするために、市販のサンプルを各種クロマトグラフィーを用いて分画し、その構造を各種スペクトル分析及び化学的な手法を用いた分析で検討した。 2)市販されている様々な重合度を持ったβ-1,3-グルコ糖のフェノール性アミド化合物誘導活性を検討した。その結果、酵母の細胞壁に由来するザイモサンにエリシター活性が見られた。動物の免疫機構を活性化するザイモサンが植物の誘導抵抗反応も誘導することは極めて興味深い。また、直鎖β-1,3-グルコ糖の7量体に弱いエリシター活性が見られたことから、β-1,3-グルカン構造が活性発現に重要であると考えられた。 3) ラミナリンが持つβ-1,6-分岐が活性におよぼす影響を検討するために、β-1,6-分岐を持たない直鎖β-1,3-グルコ糖(重合度約20)の調製を試みた。カードランは分子量が数万を越える直鎖のβ-1,3-グルコ多糖であるが、これを熱水中で加水分解することで、適当な重合度を持つ直鎖β-1,3-グルコオリゴ糖を得ることができた。この加水分解物のエリシター活性の詳細を検討した。 4)フェノール性アミド化合物の大部分はN-p-coumaroyloctopamine(p-CO)である。光学活性なp-COの合成を行い、天然型p-COの絶対配置をS型と決定した。 5)フェノール性アミド化合物生合成経路中の4種の酵素の活性を測定した。その結果PAL,4CL,THT,TyrDCいずれもエリシター処理で一時的に活性化することが明らかとなった。
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