研究概要 |
平成11年度は、オリゴ糖固相合成に必要な新技術の開発として固相上での脱ベンジル化法の検討を主に行った。 すなわち、ベンジル基は様々な反応条件に対し安定であり,接触水素添加により容易に脱保護可能であると共に、本研究課題においてオリゴ糖鎖の固相合成に必要となるオルトゴナルな保護戦略のさらなる複雑化を避けるため,終始用いる保護基としてはベンジル基を選択する必要がある.しかしながら,固相上での本反応は現状では不可能である.したがって、固相上でのベンジル基の脱保護法の開発が必要不可欠である.この問題を解決するには,接触還元の可能な均一触媒,または,微粒子触媒を開拓しなければならない。 この目的で、まず、パラジウム微粒子の溶液を調製し反応を試みることとした。原理は、通常の接触水素添加反応は溶液中の基質である有機分子が固体のパラジウム粒子上に吸着することから始まるが、固相反応に於いては基質が固体であり、溶液系外にあるため0価のパラジウム触媒は溶液として存在する必要がある。これを可能にするには、触媒粒子を通常の有機分子程度のサイズにすれば良いが、金属原子のクラスターは凝集するため安定に存在しない。様々な安定化作用を示す物質が知られている中で、直鎖状ポリマー存在下でパラジウムナノ粒子を形成して接触還元に用いた。 その結果、安定化剤であるポリマー量を増加することで固相反応において良好な接触還元触媒となることが示された。しかし、用いる固相に例えばナミド、アミン等パラジウムが配位する置換基が存在する時には、配位リガンド交換のため使用できない。現在さらに研究中であるが、現在様々な固相反応に広く用いられているポリスチレンを基本とした固相の場合には有効であると考えられる。 また、インフルエンザウイルスの二種の膜タンパク質両者を同一化合物により阻害することで、インフルエンザ予防薬へとつながるシアル酸誘導体の合成を行った。
|