研究概要 |
ビタミンEの脂質フリーラジカル捕捉反応生成物の高感度分析法を,電気化学検出器を装備したHPLCを用いて検討し,ヒト血漿の分析に応用した。ビタミンE反応生成物は,キノン体(TQとepoxyTQ),リン脂質ペルオキシルラジカルとの付加体(TOOPC),コレステロールエステルとの付加体(TOOCE)を用いた。全ての化合物の同時分析は不可能であったので,個別の分析条件を検討した。まずキノン体は,HPLCカラムで分離した後,亜鉛粉末を充填したカラムを通過させることによってヒドロキノン体とし,これを電気化学的に検出することで高感度分析が可能となり,同時にビタミンEが分析できた。一方,TOOPCとTOOCEは,白金黒を充填したカラムを通過させることによってビタミンE部位をヒドロキノン体に還元し,これを電気化学検出することで高感度分析が可能となった。次に,このHPLC-電気化学検出法を生体試料分析へ適用する際の試料調製法を検討した。ビタミンE反応生成物を添加したヒト血漿より総脂質を抽出し,固相抽出カラムによってクロロホルム溶出区分(ビタミンE,TQ,epoxyTQ及びTOOCE)とメタノール溶出区分(TOOPC)に分けHPLC分析したところ,各化合物とも十分な回収率を得た。そこで,本法をヒト血漿の過酸化反応時における内在性ビタミンEの作用機構解明に応用した。すなわち,ヒト血漿に対して過酸化反応を起こさせ,反応溶液中の過酸化脂質量とビタミンE及びその反応生成物を分析した。その結果,過酸化反応による内在性ビタミンEの消失と,反応生成物としてTQ,epoxyTQ,TOOCE及びTOOPCの生成を確認することができた。以上の結果より,本HPLC-電気化学検出法は,生体試料中のビタミンEとその脂質フリーラジカル捕捉反応生成物を高感度で特異的に分析することができ,生体内脂質過酸化反応におけるフリーラジカル捕捉剤としてのビタミンEの役割を解明するための強力な手法となりうることが示された。
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