研究概要 |
本研究は1)渓流の瀬-淵構造をその場の特性との関連で整理し,両者の関係を明確にし,2)瀬と淵の維持を意識して工事がなされた渓流の評価を通じて現在行われているいわゆる"自然に優しい"工事の改善すべき点の有無を明らかにすることが目的である. 一点目については,過去に高橋(本研究遂行者)が提唱した分類手法を用いて瀬-淵構造の分析を行なった.その結果,まず,この分類手法が合理的であること,個々の瀬や淵の長さや勾配規準化したパラメータを用いることによって異なった渓流間で瀬-淵構造の特徴を比較検討できること,その際にノンパラメトリック検定が適用できることを明らかにした.これを用いて自然渓流の特徴の相違を分析できるようになった.現在,流路工施工地や多自然型川づくりによる工事が行なわれた渓流,崩壊地から多量の土砂供給を受けている渓流などにおいて,この手法による環境特性の分析を進めており,流路工施工地や多量の土砂供給渓流では淵があまり発達していないことなどが明らかになりつつある. 二点目について,上で分析したように,旧来型の流路工は河道を平坦に固定し,自然渓流にみられるような淵が形成されない構造であることが問題であり,したがってより深掘れが形成される機能を持った工種が必要である.このような工種を入れることは局所的,対症療法的な手法であり,より根本的には渓流が持つダイナミックな構造(土石流による河道形状の変形,堆積,洗掘,流路変動など)を保持しつつ,防災目的を達成できる河道維持手法の開発が必要である.床固工や砂防ダムに関しては,魚道を造らなくてもすむような形状の構造物の開発が望ましく,このことが結局は河道のダイナミックな構造を保持することにつながる.これらの提案は従来の工種・工法と大きく異なっていることから,試行錯誤を経て技術の改善をする必要がある.
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