研究概要 |
セルロース分解糸状菌Phanerochaete chrysosporiumおよびHumicola insolensが生産する反応pH依存性の異なる2つのセロビオース脱水素酵素をカラムクロマトグラフィーを用いて多量に精製した。得られた酵素をパパイン処理して切断分離されたフラビンドメインとヘムドメインを同様に精製した。得られた酵素を.パパイン処理して2つの活性中心として存在するフラビンおよびヘムの酸化還元電位の測定,ストップドフロースペクトロメトリ法による酵素分子内における電子ならびにプロトン伝達機構の反応速度の解析を行った。 その結果として,CDHにおける酸化還元反応の速度支配因子はFADからHemeへの電子伝達であることを明らかにした。さらに,その過程での電子伝達速度が両補欠分子間の酸化還元電位差による熱力学的な因子ではなく、両補欠分子間の距離の変化に基づく因子によって決定される可能性を示唆した。 一方,P. chrysosporiumのセルロース分解系からmRNAを抽出し,これを基にCDH遺伝子をcDNAとしてクローニングした。さらに,これをメタノール資化性酵母Pichia pastoris系ベクターに挿入し,発現を試みた。その結果,1800U/L(79mg/L相当)のCDHを組換え体として得ることに成功した。組換え体CDHは物性的にも,また活性的にも野生CDHとほぼ同じ性質を示した。以上のことから,P. pastorisで発現さたCDHは今後の生化学的研究ならびに分子生物学的研究において非常に有用であると考えられた。 ウプサラ大学のC. Divneらの研究グループとの共同研究で,Humicola insolens由来のCDHヘムドメインの3次元構造を解析するために,結晶化を試み成功した。得られた,ヘムドメインの構造は基本的にはすでに明らかにされているP. chrysosporium由来のヘムドメインの場合と類似性が高かった。
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