研究概要 |
マコガレイPleuronectes yokohamaeの生息北限にあたる北海道津軽海峡沿岸域において,仔稚魚の分布,餌生物環境,摂餌戦略,成長様式,被食を明らかにし,初期生残戦略の概要を解明した。 1.浮遊仔魚は,函館湾湾口部の産卵場から沿岸の成育場に,季節風によって生じる吹送流の底層補償流によって輸送される。眼球移動仔魚は水深3-15mの海底に着底し,稚魚は水深5m前後まで接岸する。 2.仔魚は主に有鐘繊毛虫類とワムシ類を,その後発育に伴ってかいあし類ノープリウスを捕食した。仔魚の捕食の成否は,餌密度よりも低水温による影響のほうが大きく,7.5℃は本種の再生産の北限を規定する水温と推定した。海底付近に分布する眼球移動仔魚は枝角目から底生性かいあし類ハルパクチクス目へと転換した。眼球移動中には,急速な形態変化に伴って捕食能力が低下した。 3.稚魚は,交尾のために活発に動き回り目立ちやすいハルパクチクス目の雄を偏食した。標準体長30mmを超える稚魚は,ヨコエビ亜目,クーマ目,タナイス目などの小型底生性甲殻類や,多毛類を捕食した。 4.仔稚魚は着底直後にエビジャコCrangon uritaiによって被食され,水温によって駆動される両者の時空間分布の重複が生残率の年変動に関与しているものと考えられる。 5.エビジャコは主に夜間に稚魚を捕食し,稚魚よりも餌料価値の高いアミ目の密度によって,稚魚に対する捕食圧が大きく変化することが予想された。 6.仔稚魚の扁平石と礫石の輪紋が日周輪であることを確認した。 比較的流速の速い当海域で,マコガレイの生物量が高い理由は,沈性粘着卵,小型での変態の完了,津軽暖流による高水温にあると結論付けた。マコガレイの初期減耗要因は多様であり、いずれの要因が強く働くのか、今後とも継続して検討する必要がある。
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