研究概要 |
沿岸域の水環境が持つ経済的価値は,主に海面漁業・養殖業による水産物の生産と,景観も含めた海洋レクリエーション利用によるものが強く一般に認識されているものである。しかし,海水による二酸化炭素吸収や沿岸生態系による浄化作用などのSINK機能が果たす役割も重要であり,こうした一般的な認識の低い機能も含めた機能と経済価値,およびCVMやコンジョイント分析,TCMなどの経済評価方法について取りまとめた。このうち,地域経済への影響が強い沿岸漁業部門の生産により沿岸環境の直接利用価値(自然資源価値)を評価し,産業連関分析により地域経済への波及効果を分析し,食品工業や観光への影響が明らかとなった。 また,地域環境経済統合勘定体系において,産業部門とりわけ漁業部門の環境への影響を明示的に表現できるフレーム構築を試み,漁業部門の水環境や大気環境に係る環境費用を算出した。この結果,とりわけ大気環境やCO2などの環境負荷に漁船漁業が寄与しているため,移動発生源対策が重要であることが示された。 また,経済活動と環境負荷の関係を明示的に表現することが可能な枠組としてオランダで開発されたNAMEA(環境勘定を含む国民勘定行列)形式が有用であることが明らかとなり,水環境・資源に特化した枠組みや水産業に特化した枠組みを提示した。
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