研究概要 |
1998年4月から1999年5月にかけて毎月1回,宮城県女川町指ヶ浜沿岸において,潮間帯の潮位53cmから潮下帯の水深2.8mまでに形成される海藻群落とそこに生息するバフンウニの垂直分布の季節変化を調べ,殻径,生殖巣の発達,ならびに消化管内容物との比較検討によって,バフンウニの季節的な移動の要因を推定した.バフンウニは水深0〜0.3mの小型海藻群落が形成されている緩傾斜域の岩石下に周年もっとも高密度に生息した.10月から3月にかけて,より深所の無節サンゴモ群落からバフンウニが多数この場所に移動し,以後そこで生活するために高密度の分布域が形成されることが明らかになった.キタムラサキウニはバフンウニとは異なり,深所の無節サンゴモ群落で周年高い密度で分布し,夏季から秋季に浅所の小型海藻群落へ移動し,冬季には再び深所へ移動した.無節サンゴモ群落におけるバフンウニの生殖巣指数は小型海藻群落よりも周年明瞭に低く推移した。また,組織学的観察の結果,10月から3月にかけては生殖巣が成長期,成熟期ならびに放出期へ順次移行したことから,この時期の深浅移動は成熟,産卵に向けての索餌移動であると結論された.両群落に生息したバフンウニの消化管内容物を周年調べた結果,小型海藻群落においては,ツノマタ属紅藻,スジウスバノリ,ならびにホンダワラ属褐藻など周年食物としての葉状海藻が保障された。これに対して,無節サンゴモ群落では,生育する葉状海藻が周年極めて少ないことが生殖巣の発達を低下させた要因である。10月から3月には,再生産に向けて生殖巣を発達させるために,この時期に優占して生育した紅藻スジウスバノリを食物として小型海藻群落へ移動したことが明らかとなった。
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