研究概要 |
過剰な状態にある漁獲能力を適切に削減するためには,その漁法において,漁獲性能を評価するとともに,その機構としての選択性と漁具能率を分離して評価する必要がある。本研究課題では,漁獲する倉肋や性能を正しく評価するための用語を明確に定義して,それらを求める方法を整備するとともに,特に,漁獲する能力や性能におけるサイズ選択性や努力量の利用について検討を加えた. 漁業における能力を評価するために,漁具能率と漁獲努力量,漁獲効率の定義を明らかにした.以前に漁獲性能の評価のために多用された田内の漁獲性能指数を,CPUEの標準化の観点から,見直すことを行った.特に,現在世界中で行われているGLMによるCPUEの標準化と同様に,田内の漁獲性能指数は季節による資源の変化,および海域ごとによる資源の状態の違いを考慮して,それらに左右されない漁獲の性能を評価していることを明らかにした.さらに,その中で漁具選択性による性能への影響を指摘して,SELECTモデルにおける分割率パラメータがそうした選択性を除いた漁獲性能の相対値を表すことを示した.このSELECTモデルを拡張することで,漁獲努力量が明らかでない場合でも,アオリイカの餌木(擬餌針)と定置網を例として,同一海域で同一時期に操業された2種類の漁業から得られた漁獲物の体長組成から選択性を推定する方法を示した.また,マアナゴに対するかご網の操業実験を例として,SELECTモデルなどの比較操業実験において,漁獲努力量が変化するときの漁獲選択性の評価方法を示した.さらに,3種類以上の漁具間の比較操業実験から,相対的な漁獲性能もパラメータに加えながら選択性を解析する方法を開発した.刺網選択性に影響を及ぼす要因として,網目の大きさに次ぐ網糸の太さや材料の影響を明らかにした.具体的な漁業の例として,複数漁業(延縄,底曳網,かご,筒)によるマアナゴ漁業を取り上げて,その漁獲実態や漁獲特性および資源管理の方策について,検討を行った.
|