研究課題/領域番号 |
11660196
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
水産学一般
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研究機関 | 北海道東海大学 |
研究代表者 |
帰山 雅秀 北海道東海大学, 工学部, 教授 (80305937)
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研究分担者 |
上田 宏 北海道大学, 水産学部, 助教授 (00160177)
高田 壮則 北海道東海大学, 国際文化学部, 教授 (80206755)
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研究期間 (年度) |
1999 – 2000
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研究課題ステータス |
完了 (2000年度)
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配分額 *注記 |
3,700千円 (直接経費: 3,700千円)
2000年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
1999年度: 2,800千円 (直接経費: 2,800千円)
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キーワード | サケ属魚類 / 環境収容力 / 個体群密度効果 / 小型化高齢化 / 摂餌生態 / 安定同位対比 / 栄養段階 / 気候変動 / 小型化・高齢化 / 安定同位体比 / 栄養ニッチ / エル・ニーニョ現象 / レジームシフト |
研究概要 |
本研究では、生育環境とリンクした環境収容力の変化が動物の個体群動態、特に個体群密度効果に及ぼす影響を明らかにした。(1)北太平洋におけるプランクトン食サケ属魚類(ベニザケ、シロザケおよびカラフトマス)のバイオマスは気候変動とリンクして、1980年代以降著しく増加した。(2)北太平洋におけるカラフトマスの環境収容力を差分型ロジステック曲線とリッカー型再生産曲線から奇数年級群と偶数年級群に分けて算定し、気候変動指数である冬季アルーシャン低気圧の強さとの関係を求めた結果、両者には顕著な正の相関が観察され、長期的な気候変動に応じてサケ属魚類の環境収容力も変化することがわかった。(3)1950年級群以降の北海道系シロザケには個体群密度効果が観察される。北海道11河川に回帰したシロザケ雌4歳魚の平均体長と個体群サイズは顕著な負の相関を示し、個体群サイズと回帰親魚の平均成熟年齢との間には顕著な正の相関が観察された。これらのことは、北海道系シロザケは回帰量の増加に伴い、体サイズが小型化し、成熟年齢が高齢化していることを表している。なお、1997年以降回帰量は減少傾向を示しているが、それに伴って体サイズは再び増加傾向に転じている。(4)鱗分析からバック・カリキュレーションにより各年帯の成長量を推定すると、各年齢魚とも3歳時から回帰前年までの成長が以前に比べて減少していることがわかった。このことは北海道系シロザケがベーリング海に分布しているときに成長減少を起こしていることを表している。(5)石狩川へ回帰したシロザケ雌4歳魚の体サイズ(体長、体重)、肥満度および繁殖形質(生殖腺指数、卵数、卵サイズ)を1950年代と1980年代で比較したところ、体サイズは有意に小型化しているが、肥満度と繁殖形質には顕著な差が観察されなかった。すなわち、最近北海道系シロザケに観察されている個体群密度効果は個体レベルでの成長量の低下現象に止まっていると見なされる。(6)1990年代後半以降、北太平洋は新たなレジームシフトにより環境収容力は減少傾向に向かっているが、アラスカ湾におけるサケ属魚類の摂餌生態は1997年および1999年以降明らかに変化しつつある。すなわち、シロザケを除くサケ属魚類5種はそれまでイカ類(Berryteuthis anonychus)を卓越的に摂餌していたが、それが胃内容物から消失し、代わってオキアミ類や端脚類などの動物プランクトンが餌生物に卓越するようになった。また、シロザケはそれまでクラゲ類を卓越して摂餌していたが、他魚種と同様に動物プランクトンを摂餌するようになった。その結果、種間の餌ニッチ重複度は著しく高くなった。(7)安定同位対比分析から、サケ属魚類の栄養段階はシロザケ-カラフトマス、ベニザケ、ギンザケおよびスチールヘッドトラウトの順に位置づけられた。(8)これらの結果は、1999年のNPAFC国際シンポジウムおよび2000年のPICES会議などの国内外の学会・シンポジウムにおいて発表し、高い評価を得た。
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