研究概要 |
アメリカ穀物流通・加工セクターでも,いわゆる「農業・食料の工業化」,すなわちセクターの各段階において企業の大型化・少数化が進展し,それら諸段階間の結合様式が開放的な価格メカニズムから閉鎖的な管理型・交渉型メカニズムに変化する傾向が確認された。そのため穀物生産者とその協同組合も加工等の付加価値過程への進出と流通の垂直的組織化という課題に直面している。 それへのアプローチのひとつが大規模地域農協型で,自らが穀物関連の流通・加工諸分野に展開して多角的・寡占的な垂直統合体に進化し,先行する巨大アグリビジネスと競争せんとするものだった。その性格上,穀物生産者にとっての意味は規模経済とマーケットパワーを発揮しうるか否かに規定される。もうひとつは新世代農協型アプローチである。これは農業生産者が直接に出資して加工事業を興し,原料農産物への付加価値をより多く生産者と産地に留保しようとする戦略である。この場合の競争力基盤は出資と農産物出荷を直結した出荷権利株方式(delivery right share)におかれ,現実に特産品的商品やニッチ的市場分野では一定の成果を上げていることが判明した。 この新世代農協型は1910〜20年代のカリフォルニアに起源を持つ特産的農産物の自治統制的プール農協共販(サピロ型とも呼ばれた)の系譜を引く面があるが,サピロ型の特質をより強く継承しているのがアーカンソー州とカリフォルニア州の米の精米・販売農協である。米はアメリカ農産物としては特産品であること,規格化・標準化された汎用商品的流通や先物市場が未発達であること,本格的流通のためには精米過程を経ることが不可欠であること等を背景に,農協共販はその端緒から今日にいたるまで,基本的に無条件委託の完全プール共販の形態を取った。また農協が精米過程に進出するために集約的な投資=組合員出資が必要なことから,一般の穀物農協では殆ど見られない基本資本計画(base capital plan)によって利用量と出資額の均衡を図っていること等が明らかになった。
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