研究概要 |
本研究は,泥炭地の広域的な沈下状況を明らかにし,泥炭地の開発利用以来の沈下の経過,沈下の要因とその発生メカニズム,今後の変動量予測等を行うことを目的として実施した.特に北海道・石狩川下流低平地に分布する泥炭地を主たる研究対象とし,過去の地盤標高資料の収集と,泥炭地盤に関する現地調査の実施,沈下発生要因の検討などを行ってきた.結果の概要を以下に記す. 1.北海道開発局や篠津中央土地改良区の協力を得ながら,過去の各種事業の際におこされた図面類等の収集をすすめ,昭和30年代初頭以降の泥炭地の地盤標高情報を大量に見いだすことができた.これら資料をもとに,GISの手法を用いながら,各年代別の地盤標高資料として整理した.またあわせて泥炭の性状や構成植物,土地利用や排水履歴と沈下の関係などについても検討した. 2.その結果,農地として開発利用が進んでいる石狩川下流低平地の篠津泥炭地では,沈下量は場所によって大きなばらつきがあり,1956年から1996年の40年間で,平均0.4m,最大2.9mの沈下が発生していた.沈下には泥炭の自然含水比,有機物含有量,分解度等の物理的性質が影響していた.泥炭層厚,客土層厚,土地利用履歴と地盤高変化量の間には明確な関係は見いだせなかった. 3.石狩管内当別町石狩金沢地区に,泥炭地の層別地盤挙動を連続的にモニタリングする観測点を設置し,層別の地盤変動挙動を精密に捉えた.地盤変動は地下水位変動や降雪などと密接に連動していることが明らかになった.泥炭地盤の変動発生メカニズムを詳細に明らかにするためには,なお長期にわたる観測が必要であるが,その足がかりを確立することが出来た. 4.検討地域における地盤沈下は沈静化の傾向にあるものの,今後も長期にわたり継続して沈下することが示唆された.
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