研究概要 |
現在,イチゴやトマト等の果菜類の品質評価は,産地ごとに定められた検査標準規格表に従って生産者や検査員の目視によって行われている。本研究は,これらの人に代わり,高い精度で果菜類の客観的な品質評価が行えるシステムについて検討した。今回の研究は,人の目には見えない「近赤外線」の光を用いて,人の目では見つけにくいイチゴやトマト等の外傷を見つける方法の確立を目的に行ったものである。 宮崎産のイチゴ(章姫)およびトマト(桃太郎)を供試し,可視光域と近赤外光域について,CCDカメラおよび近赤外フィルター,赤外線分光分析器(PMA)を用いて果実表面の色や傷,および成熟度の判定に関する画像解析を行った。その結果,イチゴやトマトの着色度合いは,可視光および近赤外光で判別が可能であることがわかった。しかし,傷については,特に軽度の傷が可視光では見分けにくく,近赤外光の方が有利であることがわかった。このため,近赤外フィルターで撮られた画像では,目視では認識しにくい微小な力による傷を判別できた。赤外線分光分析器で傷の波長を分析すると,930〜950nm付近で近赤外光の吸収が見られ,傷による物質的な変化を確認することができた。傷の判定は,960nmおよび860nmの近赤外フィルターを通して撮影した2枚の画像を用いることによってより簡単に見つけられることが判った。 イチゴの成熟度は,可視光では色波長が特徴を表すこと,赤外光では950nm前後の波長の吸収度合いが特徴を表すことが判った。果菜類の種類,例えばトマト,ナス,キウイ,リンゴ,アボガドでは,同波長近傍で近赤外光の吸収度が異なったことから,果実内の水分状況を推定できることが判った。
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