研究概要 |
I.放牧を模した頻繁な剪葉条件下の実験群落において2年間にわたり経時的に立毛調査を行った結果,シバ(Zoysia japonica Steud.)は,寒地型牧草では通常実現不可能な高い茎数密度(概ね15,000茎/m^2)を容易に維持し,しかも,このような低草高条件下でも相対的に高い生産性の確保が可能であることを認めた。 II.シバソッドの分枝体系を時期別に堀取調査したところ,上記のような安定した高密度は,ほふく茎から1次的に生じる直立茎の内,各節群の基部側の節から生じるいわゆるA分げつが中心となって実現すること,また,1次の直立茎から生じる2・3次分げつは頻繁刈下では全茎数の30%前後を補い,茎数密度維持に一定の役割を果たすことを確認した。これに対して,A分げつの1節上に位置するB分げつは多くが休眠し,それらの一部は古い節群から随時萌芽することにより,枯死したA分げつの脱落空間を補填する機能を示した。 III.群落の地表直下に埋没するシバほふく茎先端部に標識して,生育期間中の個々のほふく茎および直立茎の挙動を追跡すると同時に,孤立個体の発育習性と比較したところ,群落下では年次にかかわりなく節群の形成数は20/年,伸長量は30cm/年程度に抑制されること,それにもかかわらずほふく茎茎端近くではA分げつが規則的に発生して秩序正しく出葉を繰り返し生産に関与すること,一方B分げつは規則的な発生は少なく,生育活性も劣ることを認めた。さらに解剖学的調査により,ほふく茎茎端におけるファイトマーの形成過程において,A分げつ芽の分化・発育はB分げつ芽より概略1節群形成期先行することを観察し,このような差働的な形態形成が両シンクの萌芽活性の違いを生み出す一因であると推察した。
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