研究概要 |
[乾物収量,可消化収量]浮稲の乾物収量は高い値を示し,特にFRC14は乾物で2,500g/m^2とトウモロコシの収量に匹敵する値を示した.子実を生産する稲の可消化乾物収量は子実収量がその大半を占めるのに対して,日本ではほとんど結実しない浮稲は,その収量の内訳は茎葉のOcc(細胞内容物)とOa(高消化性繊維)である.すなわち,イネのホールクロップサイレージは高いTDN含量を持つデンプン質飼料であるが,浮稲を原料とした飼料は,牧草に類似した,繊維質の飼料である.浮稲は,乾物収量,可消化乾物収量が高く,また,反芻家畜に必須の繊維質を含む飼料として有望である. [再生能力]1番草刈り取り後の再生した稲の草丈,乾物収量から明らかなように,子実生産の有無に関わらず,浮稲を含めて,稲の再生能力は高くないと思われる.特に浮稲では1回刈り区であるC区と各T1区,T2区,T3区のそれぞれの差が顕著であり,他の稲よりも1回刈りと2回刈りの差が顕著であった. [サイレージ特性]一般に,低水分サイレージであるイネサイレージは乳酸生成が抑えられ,pHが高いまま保存される.本試験においてもFRC12がpH4.3程度まで低下したが,他のサイレージはすべてpH4.5以上であった.子実を生産しなかった浮稲と子実を生産した日印交雑種のサイレージの間pHの差を示したが,両者の間に有意な差は認められなかった.また,サイレージ中の有機酸組成を双対尺度法を使って示した結果,日印交雑種のサイレージは酸の生成量が少なく,ほぼ原点近傍に表示された.すなわちサイレージ発酵があまり行われなかったため酸の生成量が少なかったか,もしくは生成された酸が発酵基質として消費されてしまったことを示す.浮稲はFRC12が1回刈り区および2回刈り区で乳酸生成量が多かったため,横軸の乳酸の近傍に表示された.このことはFRC12のpHが最も低かったことと符号する.またFRC5,FRC7は2回刈り区において乳酸生成量が多いことが認められた.その他の浮稲品種も日印交雑種より各種の酸の生成が多かったことが認められた.
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