研究概要 |
初年度の実験で乳タンパク質酵素分解物を調製するため、限外ろ過法による脱脂乳濃縮物を基質とし、食品用酵素剤を用い50℃、5時間の条件で反応させた。反応後90℃で20分間加熱し失活させ、凍結乾燥法で粉末化したものを用いた。ゲルろ過/HPLC分析の結果、酵素処理により乳タンパク質の大部分は分子量1,500以下のペプチドになっていた。この乳タンパク質酵素分解物を添加したソーセージにおいて、発色色素の生成量増加が確認された。また、酵素分解物を50%エタノールで抽出した画分を添加したソーセージで、さらに発色率が向上した。これらの結果から、食肉製品におけるタンパク質酵素分解物の発色促進剤としての効果が認められた。 次年度は、乳清タンパク質の酵素分解物について検討を行った。この分解物は、乳清タンパク質濃縮物(タンパク質を80%含有,以下WPC80と略記)を基質とし、食品用酵素剤で分解して粉体化することにより調製した。試作ソーセージ(NaCl2%およびNaNO_2100ppm添加)の発色率によってアスコルビン酸ナトリウム(0.1%)とWPC80酵素分解物(5%)の発色促進効果を比較したところ、ほぼ同じであった。ゲルろ過/HPLC分析で、酵素処理により乳清タンパク質の大部分は分子量1,000以下のペプチドに分解されていることが示された。ミオグロビン(Mb)の加熱モデル系実験で、WPC80酵素分解物の濃度が増加するほど発色率は上昇し、一方残存亜硝酸塩量は減少した。エリソルビン酸ナトリウム(NaEry,0.1%)の系と比べると、WPC80酵素分解物は同程度の発色促進効果を示した。WPC80酵素分解物の還元力は、NaEryと比較し、はじめ低かったが、加熱により次第に増加する傾向を示した。また、WPC80酵素分解物がMbの熱変性を最も促進し、変性Mbの発色度も最も高い値を示した。本研究結果から、低分子量(主に分子量1,000以下)のペプチドからなる乳清タンパク質酵素分解物は、加熱時に還元力が増加することに加え、Mbの熱変性を促進することによって、発色を促進している可能性が示唆された。
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