研究概要 |
(1)放牧期間中の赤血球容積に関する遺伝的パラメータの推定 初放牧の日本短角種子牛437頭のデータを用いて,遺伝的パラメータの推定を行った。放牧前の血球容積(PCV)と放牧期間中の最低PCVおよび日増体量のデータをそれぞれ220頭,415頭および400頭より得た。放牧前PCVと最低PCV,および日増体量の遺伝率はそれぞれ0.61,0.16,0.67と推定された。貧血抵抗性と生産性の同時改良は十分に可能であることが示された。しかし,この改良によって,通常のPCVは上昇することが考えられ,その上昇を引き起こさずに,貧血抵抗性と生産性を改善しうる何らかの指標の必要性が考えられた。 (2)放牧期間中の複数の血漿成分と貧血の程度の関連 黒毛和種子牛13頭を用いて,放牧期間中の血液性状(赤血球数,PCVなど)血漿代謝成分(尿素態窒素,総タンパク質,総コレステロール,総リン脂質,HDLコレステロールおよびリン脂質)および肝機能(ALP,GOT,GPT)の測定・分析を行った。多変量解析の結果,HDLに関連する脂質,リン脂質(PL)および(TC),が貧血の進行に密接に関連していることが示唆された。 (3)生理指標を用いた貧血抵抗性の遺伝的改良の検討 初放牧の日本短角種子牛417頭のデータを用いて,放牧前の血漿リン脂質量,コレステロール量の遺伝的パラメータを推定し,生理的指標の利用が本症の遺伝的抵抗性改良に有効か検討した。PLおよびTCの遺伝率はそれぞれ0.31および0.09であった。これらを選抜指標に加えた場合,遺伝的抵抗性の改良の効率は大幅に改善されることが示唆された。このことからPLおよびTCは本症の遺伝的抵抗性の改良の有効な指標になりうることが示唆された。
|