研究概要 |
本研究は反すう動物ルーメン内で主要とされる繊維分解菌である3菌種(Fibrobacter succinogenes,Ruminococcus albus,Ruminococcus flavefaciens)の動態解析を目的として、分子レベルでの新規手法を開発・応用しようとするものである。具体的には競合PCRと蛍光in situ hybridizationを取り入れ、手法確立および応用上、有用な以下の知見を得た。 1)16SrDNAの配列中で標的菌種に特異的な領域を利用してデザインした競合PCR用プライマーを使用し、標的菌種の遺伝子のみの増幅が可能であった。開発した競合PCR定量系はきわめて感度が高く、しかも使用菌量に応じて直線的に定量値も変化した。ヒツジルーメン液に既知量の標的菌を加えたものから得られた定量値も、菌添加量に比例して直線的に増加した。このことから混合菌レベルでも定量性は高いと判断された。定量値の再現性にも問題はなかった。 2)競合PCRをルーメンサンプル中の標的菌動態分析に応用したところ、3種のうちF.succinogenesが他の2菌種にくらべ圧倒的に多く、かつこの菌種は粗飼料多給時に有意に増加した。さらに後腸でもルーメンと同等の密度で定量された。したがってF.succinogenesが反芻家畜消化管の繊維分解において重要な役割をもつことが示唆された。 3)一方顕微鏡下での特異的検出をめざし、蛍光in situ hybridizationの開発を試みた。16SrDNAの特異領域をターゲットとする蛍光プローブに対する反応条件を確立したところ、純菌レベルではいずれも明瞭な蛍光検出が可能であった。またルーメンサンプルに添加した純菌も検出できた。
|