新生仔PRL、GH産生細胞に対するestrogen(E2)の影響: 新生仔血中には多量のα-fetoprotein(AFP)が存在し、血中遊離E2を不活化しているため、AFP抗体を投与し、PRL、GH産生細胞の発育を調べた。また、新生仔ラットから下垂体前葉を採取し、未成熟各産生細胞に対するE2の効果を検討した。さらに、様々な乳仔血漿分画を作成し、上記と同様にPRL、GH産生細胞発育・分化調節因子の存在を確認した。 【実験1】生後1日目から2日間、乳仔腹腔内にAFPに対する特異抗体を投与し、最終投与2日後、血清並びに下垂体前葉を採取し、血清E2濃度と下垂体PRL、GH産生細胞含有率を免疫細胞化学法により測定した。その結果、血清E2濃度は、胎生期から生後12日目まで約50pg/mlを推移し、生後20日目に著しく上昇した。AFP抗体投与は、血清E2濃度に影響しなかったが、高濃度のAFP抗体は、PRL細胞を増加させる傾向にあった。 【実験2】胎仔から下垂体前葉を採取、単離し、10%FBSを含むD-MEMにより、24時間培養し、培養液を添加ホルモン剤を含む無血清D-MEMに交換した。交換後、1ng〜100ngのE2を添加し、さらに72時間培養した。また、分娩後4日目の乳仔血清を採取し、限外濾過により血清分画を作成し、上述の無血清培地を用いた単離細胞系に添加し、72時間培養した。培養後、免疫細胞化学とRT-PCR法によりPRL、GH並びにPRL/GH細胞の増殖に対するE2および乳仔血清分画の影響について検討した。その結果、E2は用量反応的にPRL細胞の増殖を促したが、GH細胞に対しては無効であった。PRL/GH細胞は、PRL細胞と同様に推移した。PRL mRNA発現量は、タンパクの発現量と一致しなかった。 新生仔期の下垂体PRL、産生細胞の増殖はE2によって促進されるが、その増殖は血清に存在する因子によって制御されることが明かとなった。また、その制御は、タンパクへの翻訳段階にある可能性が示唆された。
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