研究概要 |
本研究では、日齢によるニワトリ胃腸管motilin(MT)反応性の変化,ニワトリMT抗体の作製,MT様物質含有細胞の発現と分布、腺胃支配腸神経の性質とふ化日齢による変化、NO作動性神経とMT収縮の相互関係等について検討した。得られた成績と考察を以下に述べる。 (1)MT反応性の生後変化:ニワトリMTは、ほ乳動物のMTと比較しニワトリ腸管では高活性を、ウサギ十二指腸では低活性を示した。アミノ酸構造の比較からニワトリMTで4位がlleからPheに変わったことがニワトリMT受容体への活性を高めていた。MTの収縮反応は、生後100日まで腺胃においてのみ最大収縮が50%から10-15%に低下した。アトロピン処置腺胃、回腸では収縮の低下が認められなかったので、MT収縮の神経性成分のみが生後順次減弱することが明らかになった。このことはMTの生理的意義を考える上で興味深い。収縮が低下するメカニズムは不明であるが、腺胃ではMT収縮はNOを介する系により抑制を受けることが明らかになっており、NO神経を介する抑制の度合が日齢により変化する可能性も考えられた。(2)腺胃支配神経と日齢による変化:ふ化1-50日齢の間で腺胃神経刺激(EFS)により誘起される反応を解析し、コリン性興奮神経、非アドレナリン非コリン性(NANC)興奮神経(低頻度)、NO性抑制神経、NANC, nonNO性抑制神経、NANC興奮神経(高頻度)の5種類の神経が存在することを明らかにした。コリン性収縮の頻度反応関係は日齢により殆ど変化しなかったのでコリン性神経経路はふ化時すでに完成していると考えられた。L-NAMEは低頻度(2-3Hz)の刺激による弛緩を著明に抑制したが、抑制率はふ化日齢と共に低下した。このことは、ふ化1日目で既に抑制性NO神経支配が確立していること、その後L-NAME非感受性(nonNO性神経)抑制神経が発達することを示している。(3)MT含有細胞の日齢による変化:ニワトリMT抗体を作製し酵素抗体法で特異性を確認した。MT陽性細胞は、幽門、十二指腸、空腸、回腸の粘膜上皮には存在するが、腺胃、筋骨、盲腸、結腸では認められなかった。MT陽性細胞の分布(幽門部)をふ化後経時的(0,1,3,5,10,15,20日目)に検討してみると、0-1日目までは主に粘膜固有層に、5-20日目までは粘膜上皮に認められた。このことより、MT陽性細胞はふ化後0日目から出現し、経時的に粘膜固有層から粘膜上皮に移動するものと推察された。一方、中枢神経では陽性細胞は確認出来なかった。MT反応性の高い消化管部位にMT含有細胞が局在していたことは、このpeptideがニワトリでも消化管運動調節ホルモンであることを示す。
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