研究概要 |
本研究では発がんプロモーション時期に特異的な発現遺伝子の同定を目的として,ラット肝二段階発癌モデル(肝中期発がん性試験法)を利用して,phenobarbital(PB)投与によるプロモーション初期(10日目)に発現上昇する遺伝子群をsubtractive PCR法にてクローニングし,計67の単独遺伝子を単離した。次いで,PBの他,プロモーション作用の陽性ないし陰性対照であるethinylestradiol, butylated hydroxytoluene投与8週目のラット肝組織と,PBでプロモートされた肝細胞癌での発現を指標としてスクリーニングし,16遺伝子を得た。その内,2つの未知遺伝子の他,発がんとの関与が示唆されている数種の遺伝子が得られたが,特に強い発現を示したubiquitously expressed ABC half transporter, apolipoprotein A4(APOA4),nuclear receptor binding factor-2,CD81,hypothetical protein(HSPC014),未知クローン#2は短期発がん性指標の候補と考えられた。また,その多くは正常肝臓での構成的に発現し,イニシエーションにより発現抑制を受けた遺伝子のプロモーションによる抑制解除が示唆された。これらの遺伝子は各種の非遺伝子傷害性肝発がん物質の28日間単独投与には特異的に反応しないことから,プロモーション過程に特異的な発現遺伝子であると考えられた。次に,これらのmRNAの局在検索を行った結果,APOA4 mRNAがプロモーション作用の強いthioacetamide投与によって形成されたGST-P陽性巣に一致した局在を示した。この遺伝子産物の発がん過程での役割の追求は今後の課題であるが,APOA4は腫瘍性病変の形成に関与している可能性が示唆された。
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