研究概要 |
モルモット心臓から酵素処理により得られた単離洞房結節細胞に全細胞型パッチクランプ法(whole-cell patch-clamp)を適用して,急速活性型(I_<Kr>)ならびに緩徐活性型遅延整流性K^+チャネル(I_<Ks>)の記録,および自発性活動電位の記録を行った.I_<Kr>ならびにI_<Ks>は,それぞれ,E-4031感受性電流ならびに非感受性電流として単離した. 1.I_<Kr>ならびにI_<Ks>の電気生理学的,薬理学的特性に関する実験(voltage-clamp mode) (1)I_<Kr>の電流密度(0.45±0.06pApF^<-1>;n=6cells)はI_<Ks>の電流密度(8.71±0.40pApF^<-1>;n=6cells)の約1/20であったが,活動電位を想定した脱分極パルス(+20mVへ100msパルス)によって活性化されるI_<Kr>ならびにI_<Ks>の大きさはほぼ等しかった(I_<Kr>,0.38±0.03pApF^<-1>;I_<Ks>,0.43±0.04pApF^<-1>;n=4cells). (2)I_<Ks>はchromanol誘導体である293Bにより可逆的かつ濃度依存性(半最大抑制濃度=5.4μM)に抑制され,50μM以上の濃度でほぼ完全に抑制された.293BによるI_<Ks>の抑制効果は脱分極によるI_<Ks>の活性化時間の延長とともに強くなった(時間依存性ブロック). 2.I_<Kr>ならびにI_<Ks>の自発性活動電位の発生における役割について(current-clamp mode) I_<Kr>のブロッカーとしてE-4031(0.5μM)を投与すると,自発性活動電位の再分極過程が約-30mVより過分極側で遅延し,続いて最大拡張期電位の脱分極,さらには自発性活動電位の停止が観察された.よって,自発性活動電位の再分極過程後半は主に,I_<Kr>に依存していることが明らかとなった.また,I_<Ks>のブロッカーとして293B(50μM)を作用させると,多くの場合,約10mV程度の最大拡張期電位の脱分極が誘発されたので,I_<Ks>もまた自発性活動電位の再分極過程に寄与していることが示唆された.ただし,293Bは開口したI_<Ks>を比較的ゆっくりブロックするので,293B投与による自発性活動電位発生中のI_<Ks>の抑制の程度に関して今後定量的評価を行い,I_<Ks>の自発性活動電位の発生における役割について詳細に解析する予定である.
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