研究概要 |
1.正常心室筋細胞から大きな剥離パッチを作成する方法を開発し、Na^+-Ca^<2+>交換電流(I_<Na/Ca>)とNa^+ポンプ電流記録に成功した(心筋細胞マクロパッチ法)。 2.心筋細胞マクロパッチ法を用いたI_<Na/Ca>の逆転電位測定から、Na^+:Ca^<2+>交換比率を求めた。交換比率は従来考えられていた3Na^+:1Ca^<2+>ではなく、4Na^+:1Ca^<2+>交換であった。細胞質側Na^+濃度5mM以下では3Na^+:1Ca^<2+>交換に変化する可能性が示唆された。 3.細胞質側Na^+とCa^<2+>によるNa^+-Ca^<2+>交換活性制御のキネティクスを解析した。Na^+依存性不活性化は、ブレブ膜や卵母細胞に発現したNa^+-Ca^<2+>交換よりも約2倍速いキネティクスを示した。細胞質Ca^<2+>による活性化は、約10倍速いキネティクスを示した。Ca^<2+>による制御はbeat-to-beatに起こる可能性が示唆された。 4.マクロパッチのデータを基にNa^+-Ca^<2+>交換モデルを作成した。モデルは、Na^+,Ca^<2+>濃度依存性、Na^+依存性不活性化、Ca^<2+>による活性化をよく再現できた。 5.実心室筋細胞におけるNa^+-Ca^<2+>交換をコンピュータシミュレーションにより解析した。静止膜電位においては大部分のNa^+-Ca^<2+>交換が不活性化状態にあって機能せず、Ca^<2+>トランジエントの発生とともに活性化状態に移行し、Ca^<2+>トランジエントの減衰とともに再び不活性化状態に移行することが明らかになった。 6.膜電位固定下心室筋細胞で、細胞外液急速交換法を用いて、Na^+-K^+ポンプのNa^+輸送に起因するcharge movement記録に成功した。さらにK^+輸送についても、Na^+輸送charge movementの約1/4の大きさのcharge movementが記録できた。Na^+輸送のみならず、K^+輸送も膜電位に依存することが示された。
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